こんにちは! ヨス(プロフィールはこちら)です。
子どもに人気の国民的アニメ『ドラえもん』。
わたしも小さい頃に見ていましたが、大きくなって子どもがいる身になって見てみると、かなりの違和感を持つシーンがあります。
そのなかの1つが、主人公の のび太が、ヒロインである しずか ちゃんのお風呂をのぞく……というお約束シーンです。
目次
しずかちゃんのお風呂をのぞく のび太
このシーンがよく発生するのが、のび太が、しずかちゃんの家に「どこでもドア」で行こうとするとき。
しずかちゃんはお風呂が好きなので、アニメのなかでは頻繁に入浴しています。
そのため、のび太がドアを開けると、お風呂に入っているしずかちゃんのところにたどり着くのです。
そして、「きゃー! のび太さんのエッチ!」バシャーとお湯をかけられる……というのがお約束です。
いやいやいや、本当なら「のび太さんのエッチ!」ではすまないだろ……。
「水」が必要なときに、しずかちゃんのお風呂に意図的にワープするというシーンも見たことがあります。
なぜ問題なのか?
さて、このシーンですが、わたしは子どものころから疑問に思ったことはありませんでした。
「ははは! のび太はアホやなぁ」程度にしか思っていませんでした。
そして大人になってからは、なぜか「イヤな気持ち」になってモヤモヤしていましたが、その原因はわからなかったんです。
このシーンのどこが問題なのでしょうか?
それは、「お風呂ののぞき」は犯罪行為だからです。
たとえば、のび太のお父さん(のび助)が同じことをやったとしたら警察に捕まりますし、視聴者も笑えないでしょう。
フツーにひくわ……。
でも、のび太だと罰せられるどころか、「笑うシーン」としてとらえてしまうのですが、これは一体なぜなの?
子どもだと許されるのか?
のび太が「お風呂の のぞき行為」をしても笑って許されるのは、のび太が子どもだからなのです。
でも、子どもだからと言って許されていいのでしょうか? ……と、こういう話をしていると、こんなことを言う人が多そうですよね。
いやいや、アニメのなかの、しかも子どもの話だろっ! ムキになんなよ!
わたしも、最初はそう思っていたのですが、太田啓子さんの書籍『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』を読んで「モヤモヤの正体」がわかりました。
この書籍ではこちらのように書かれています(太字はヨスによる)。
性暴力を「笑いをとるネタ」として扱うことは、性暴力を軽視する意識を視聴者に与えます。とくに子どもも見る番組なのだから、誤った認知を与えないようにすべきということに、制作者はもっと敏感になってほしいと感じさせられた件でした。
つまり、「お風呂をのぞく」という行為だけでなく「スカートめくり」や「お尻を触る」といった「性暴力」をアニメのなかの子どものキャラにやらせ、それで笑いをとる構図が、それらの行為を軽視させているということです。
男の子キャラがこういった「いたずら行為(本来は犯罪行為)」をすることは当たり前に描かれていますよね……。
だからこそ、これは根深い問題なんですよね。
「セクハラ」のような言葉が冗談半分で使われるという状況も同じ問題をはらんでいますね。
被害者の女性側の判断力を鈍らせる?
さらに言うと、こういう犯罪行為を「悪ふざけ」というオブラートで包み、「ここは笑うトコ」と思わせることで、女性の判断力を鈍らせる悪い効果もあるとわたしは思っています。
たとえば、飲み会で「職場の同僚に胸を触られた女性」がいたとしましょう。
ものすごく気持ち悪いし、怖いし、イヤなのに、許容してしまう女性が多い気がしませんか?
「これは酔ってふざけてやっているだけだし、スルーするのが大人の対応!」だと思い、犯罪行為を許容してしまうのです。
「飲み会がシラけるだろ」という、空気を読めという圧力で、犯罪行為を許容させる問題もありますが。
「ここまではOK」だという間違ったラインを作っている
ここでのポイントは、そんなふうに酔った男性でも、「同僚女性の服の中に手を入れて、直に胸をまさぐりまくる人」は存在しないということです(いないことを祈る……)。
つまり、それは「やってはいけない」とわかっているんですよね。
逆を言うと、酔っているときに少し胸を触るぐらいなら「悪ふざけとして許されるでしょ」という計算が頭にあるということを意味します。
では、なんでそんなふうに思うのかというと、小さいころから触れてきたメディアの影響でしょう。
この記事で取り扱っている「のび太のお風呂のぞき」もその1つだと思っています。
男性の教師が女子生徒の容姿にアレコレ言う学校がセクハラにうとい人を量産させているのと同じで、性犯罪を「ジョーク」として見せることで、性犯罪にうとい人を量産しているのです。
カンチョーが原因で殺人も?
のび太の風呂のぞきと同じく、「子どものいたずら」というオブラートで包まれ、子どもに許されている行為に「カンチョー」があります。
ところが、このカンチョーのノリで人を殺してしまった若者がいるのです。こちらも太田啓子さんの書籍から引用します(太字はヨスによる)。
2018年7月、茨城県の 34 歳の男性が、エアコンプレッサー(圧縮空気を噴出する機械) を同僚男性の肛門に噴きつけ、肺損傷により死亡させるという事件が起きました。このような死傷事件は他にも何件か起きているそうです(☆3)。この男性は「悪ふざけしていた。死ぬとは思わなかった」と述べたと報じられていますが、肛門への乱暴な接触を「悪ふざけ」と捉える感性が、文字通り死を招いた実例です。 人の体の傷つきやすい部分を粗暴に扱うことを「悪ふざけ」としておもしろがる行いは、他者の体と人格を尊重する感覚とは遠く離れたものとして、大人が介入して教えていくべきだと思います。
「カンチョー」という暴力は、わたしの知っているかぎり、日本だけに存在するものです。
日本ではこれを「悪ふざけ」で処理しているため、上の引用のように、大人になってからも、同じような「悪ふざけ」のノリで殺人を起こしてしまうのです。
これを読んでいる人のなかにも、ドキッとした人は多いのではないでしょうか?
「そんなに目くじらをたてなくても……」と思っていることのなかにこそ、問題が潜んでいるということですね。
さて、今回の記事の内容ですが、下記のキャンペーンを見て「書かなくては!」と思ったのが動機です。
ぜひ、『ドラえもん』のなかから「お風呂ののぞきシーン」をなくしてもらえるように賛同してください。
参考: キャンペーン · テレビ朝日: #ドラえもんのお風呂シーンのカットを希望します · Change.org
ちなみに、ドラえもんにはほかにもこういう問題があります。