こんにちは! ヨス(プロフィールはこちら)です。
今回は、香川県丸亀市で開催された清水
展人
さんの講演会に行ってきました。「自分らしく生きる~性別違和を乗り越えて~」という内容です。
非常にすばらしい講演だったので、その内容をレポートとしてまとめます!
目次
清水展人さんについて
まず、清水展人さんについて簡単に紹介します。
清水さんは女性の身体を持って生まれてきましたが、本来の性別は男性だった方です。幼稚園のころから、自分の性別に違和感を持ち始めました。
どんな違和感かと言うと、清水さんご本人は自分を男性だと認識しているにもかかわらず、周りの人は「女の子」だという認識で接してくることです。
その後、18歳で「GD: 性別違和(性同一性障害)」と 診断され、21歳で手術をし、本来の性を取り戻しました。
現在は結婚し、大阪府に「NPO法人 Japan GID Friends」を設立し、理事長を勤めています。そして、全国各地で講演会の講師として活動しています。
簡単な道ではなかった幼少時代
……とまぁ、サラッと書きましたが、こんなに簡単な道ではありません。
実際に清水さんご本人の口からお話を聞きましたが、それは大変な道のりだったそうです。
幼稚園のころの話ですが、朝起きるとお母さんがいつも枕元に「その日に着る服装」を用意してくれていました。
でも清水さんは、そのお母さんが選ばれた服……女の子っぽい服をどうしても着たくなかったそうです。そのため、その服を着ずに自分でタンスの中から選んでいました。
女の子っぽいものへの違和感は服だけではありませんでした。
まわりの女の子がお人形みたいなおもちゃに興味を持つ中、清水さんは仮面ライダー、ローラースケート、電車のおもちゃなどに興味を持っていたそうです。
その場に「ふさわしい服」が性別でわかれている
清水さんは小学校のときもずっとスカートを履かず、女の子っぽい服を避けていました。私服だったのが幸いだったと言っていましたが、まさに……。
それをお母様も理解してくれていたそうですが、それでも卒業式のような場になると話は別でした。
ピアノの発表会とかそういう場では「ふさわしい服」というのがあります。あるのはいいんですが、それが「性別」によって「ふさわしい服」が真っ二つにわけられているのが問題だったわけです。
世間がその服を着るのがふさわしいとみなしていても、当の本人はふさわしくないと思っている。
これはわたしも心の底から共感します。わたしもずっとスーツが嫌いで就職もしたくなかったので。
苦しかった学校時代
清水さんは周りの人から、いつも元気で運動大好きな子と思われていて友達も多かったそうです。
小学低学年までは何の問題もなく過ごしていました。ですが、中学年ぐらいから周りからのいじめに遭ったんだとか。
「女のになんで男の格好ばかりするんだ?!」とか……。
そんないじめに遭っても親には相談できませんでした。そんなこと言うと、女の子っぽい服を着させられるんじゃないか?という不安からです。
先生にも言うタイミングをなくしたため、そのままずっと誰にも相談できない「孤独な戦い」が幕開けしてしまいました。
小学校の卒業式ではズボンで出席
そんな中でも自分を押し通して常にズボンを履いていた清水さんでしたが、またしても難関が立ちはだかりました。
小学校の卒業式です。
先ほども書きましたが、こういう場には「ふさわしい服」があります。ですが「絶対にスカートは履かない!」とお母さんに宣言して、それを通したそうです。
卒業式当日に、周りになんて言われるのか……と小学校の子が怯えながら自分をとおしていたと思うと、その恐怖はすごかったと想像できます。
冷静に考えると「自分が着たい服を着ているだけ」なのに、こんな思いをしなければいけないのって、明らかに問題ですよね。
ちなみに性的マイノリティの方(LGBTIQ)は13人に1人いるそうです。左利きやAB型の人と同じぐらいいるんですね。そう考えると全然珍しくないですよね。
自分を偽って生き始めるという決心
中学校に入学した清水さんに悪夢のような現実が待っていました。それは「制服」です。小学校は私服だったのですが、中学校では強制的に「女性」=「スカート」という現実が待っていました。
友達から電話で「ほんとにスカート履くの!?」と心配されたそうです。
そして中学生にもなると、避けられない身体の成長がやってきます。清水さんの意志とはうらはらに、身体はどんどん女性になっていきます。
まわりの友達は「生理」や「胸の膨らみ」を違和感なく受け入れていく中で清水さんは苦しみ、「なんでこんな身体に産んだの!?」とお母さんにひどく責めたこともあったそうです。
清水さんは「このままでは生きていけない」と思い、ある決意をします。
それが「女性として生きること」です。タンスの中の好きな服を全部捨て、化粧道具を買ったり、ありとあらゆる努力をし始めました。
髪も長くしたり、男性と付き合ってみたり。ですがわかったのは「自分はやっぱり女性にはなれない」ということだけ。
そんな状況でしたが、清水さんは「ある光」に出合います。それがテレビドラマ『3年B組金八先生』です。
「性同一性障害」という言葉に出合う
なぜ『3年B組金八先生』が光だったかというと。
このドラマの第6シリーズ内で、上戸彩さんが「性同一性障害」の生徒として出演していたんです。そして、それをドラマの中で「性同一性障害」という名称で扱われていたんです。
清水さんはこのドラマを見て初めて「性同一性障害」という言葉を知りました。
そして、自分の身体に起きている「周りの人に理解されなかった現象」がまさにこれに当てはまることを知りました。
清水さんは、講演の中でこのドラマを「光」と表現していましたが、まさにそうだったんでしょう。
自分と同じ状況の人がドラマの中で扱われるなんて、かなり勇気をもらったことだと思います。
本当に言葉、定義づけというのは重要です。「セクハラ」という言葉ができて初めて、会社内で男性が望まない女性のおしりを触る行為が「犯罪行為」だと認識されたように。
正式に「性同一性障害」と診断される
その後清水さんは、18歳のときに性同一性障害と正式に診断されました。
ですが、それをご両親にカミングアウトしたとき、お母さんはショックすぎて何日も何日も、毎晩泣きつぶれていたそうです。
ただ、そのときに事前知識があればそこまでショックを受けなかっただろうと話していました。だからこそ、現在、清水さんが日本中を回って啓発活動を続けているんです。
そしてついにです。2007年に一大決心をします。
そして、2007年、悩み続けてきた性同一性障害と向き合い、一大決心をして台湾へ行き、手術。人生を再出発させる。
プロフィール - 清水展人の勇気となるホームページ より引用しました。
それが手術です。現代医学のお陰で、本来の性別に戻ることができました。
帰国後には、裁判所で戸籍上の氏名や性別の変更をし、本当の自分に生まれ変わりました。
ですが、それでもまだ現実は厳しかったそうです。
厳しい現実の中でもつかんだ幸せ
ホルモン治療が完全ではないころはどっちのトイレに行けばいいのか悩んだり、彼女ができたときも「彼氏がいる」という表現を使っていたそうです。
今よりも中性的だったため、電車の中でもジロジロと見られ、すれ違いざまに「あいつ男? 女?」と言われたり。
仕事を探しても、性同一障害というだけでどこに行っても「前例がない」ので働かせてもらえない。
そんな厳しい現実の中、見つけた最愛のパートナーとの出会い。そして結婚!
清水さんのパートナーは言いました。
障がいがあったから「今」があるんじゃない? 障がいも強みでしょ?
なんて素晴らしい言葉でしょうか。前向きでポジティブなパワーにあふれていますよね。
今の清水さんを築き上げたのは、良い過去も苦しかった過去も含めすべての経験です。その中に「男性なのに女性の身体で生まれた」という壁も含まれます。
その体験がなければ今の清水さんはいませんし、今の幸せには到達できなかったということです。
絵本『わたしはあかねこ』の話
実はこの講演会の中で、清水さんは『わたしはあかねこ』という絵本を最初に紹介してくれました。
この絵本がすごく良かったので最後に紹介します。
内容を簡単に紹介すると……
しろねことくろねこの間に子どもたちがいました。子どもの中で自分だけなぜか赤い色です。
親は子どものことを考えて、色を白く塗って白いネコにしようとしたり、黒い魚をたっぷり食べさせて黒いネコにさせようとににしようとします。でも、ある日のこと、青いネコに出会います。青いネコと意気投合し、ずっと一緒にいることになりました。で、2匹の間に子どもが生まれるのですが、その猫たちはなんと虹色!
あかねことあおねこの間に生まれた虹色の子どもたちはこんなです。
この虹色の猫たちはまさに、性の多様性を表していますよね。
ほかと違ってもいい。だってあなたは世界で一つだから……という強いメッセージをもったすばらしい絵本です。
今回は以前から興味のあった「性的マイノリティ(少数派)」の方の講演を初めて聴きに行けました。
わたしもこのブログの中で「男性だからこう」「女性だからこう」と決めつける社会に対する危機感を繰り返し書いています。
正直なところ、今の社会は性的マイノリティじゃなくても生きにくいです。それをひどくしている一つの悪因が性別による決め付けです。
その確信を清水さんのお話を聞いてさらに強く思うようになりました。今回は本当にすばらしい講演、ありがとうございました。
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