こんにちは! ヨス(プロフィールはこちら)です。
わたしの姓は「矢野」ですが、実は戸籍上では結婚して姓が変えられています(日本では夫婦別姓がまだ認められていないため)。
今回は、姓が変わった男性に向かって使われる「婿養子」という日本語についてです。
勘違いされている方が多いと思うので、そのことについてまとめます。
目次
「夫が姓を変更」=婿養子ではない
わたしの夫婦は、結婚後もお互いが自分の姓のままでいたいと思っています。
でも、いまだに日本では夫婦別姓が認められていないため、結婚すると夫婦のどちらかが姓を変えさせられます。
そのため、わたしたち夫婦は、夫側のわたしが戸籍上の姓を変更することにしました。
「え? 夫が姓を変えてもいいの?」と、言われることがあるのですが、法律上ではどちらが姓を変えても問題ありません。
特別な手続きがいるわけではなく、「婚姻届」のこちらの欄で「妻の氏」を選ぶだけ!
それなのに、今の日本では95%以上のカップルで「夫の姓」を選んでいるという……。
つまり、姓を変える男性が少ないがゆえに、「男が名字変えてもいいの?!」と本気で聞いてくる人がいまだにいるのです。
「結婚したら女が姓を変えなければならない」という法律があったら、完全に女性差別になるので大問題ですよ……。
そして、わたしは結婚し「改姓」したのちも、「旧姓」を名乗り続けています。
でも、「戸籍上はパートナー側の姓になっている」ということを話すと、こんなことを言う人がいるんです。
え? 婿養子なの?
いえいえ、違います(笑)。
ただ単に、結婚したときに戸籍上の姓として、妻側の姓を選んだだけです。
つまり、
「結婚して姓を変えた夫」は婿養子ではありません。
単に、結婚して妻側の姓を撰んだだけです。妻側が夫側の姓に変更するのと100%同じです。
「妻側の家に同居」=婿養子ではない
では今度はわたしの父について紹介します。
わたしの父は、母側の家に同居しています(すでに祖母も祖父も亡くなっていますが)。
つまり、父は俗に言うマスオさんの状況ですね(「マスオ」は漫画『サザエさん』に出てくるサザエさんの夫の名前です)。
サザエさんはマスオさんと結婚して、姓が「フグ田」になりました。でも、磯野家に同居しています。
ときどき、こういう「マスオさん」の状況を「婿養子」と表現する方がいるのですが、それは大間違い!
マスオさんは母方の家(磯野家)に住んでいるだけだからです。もし養子になっていれば、マスオさんの姓は必ず「磯野」に改姓しないといけないハズです。
なぜなら、婿養子というのは、マスオさんから見ると血のつながりのない「波平」と「フネ」の法律上の息子になるという意味だからです。
そのため、マスオさんがその2人の実子になっていれば、「磯野」の姓を名乗らなくてはなりません。
でも「フグ田」ですよね。
つまり、マスオさんはサザエさんと結婚して磯野家で同居しているだけです。
ちなみにわたしの両親の場合も、マスオさんと同じく夫側の性を名乗っています。
父が母の家に住んでいる理由は、母が一人娘であるため「祖母から引き離すのがかわいそう……」という父の配慮からです。素敵な父でしょ?
ではもう一度まとめますが、
「夫が妻の実家に同居」は婿養子ではありません。
単に同居しているだけです。妻側が夫側の家族と同居しているのと100%同じです。
実はうちの祖父は本物の「婿養子」でした
わたしの話に続いて父の話が出ましたが、今度はわたしの祖父(母側の祖父)の話もしましょう。
実は、わたしの祖父(母が赤ちゃんのときに死去)は、本当の婿養子だったようです。
祖母に兄も弟もいなかった(妹はいます)ため、「婿養子」という制度を取らないと、家系が途絶える……という時代だったからです。
昭和22年以前には女性が結婚すれば必ず実家を出て、男性(夫)の家族の元へ「嫁ぐ(夫側の戸籍に入る)」ことが法律で決められていました。
すごい時代だなっ!
ところが、子どもに女の子しかいない場合、この法律が仇となって家を継ぐ者が消滅するということになりますよね。
そこで、その対処法として、そして法律のつじつまを合わせる方法として編み出された技が「婿養子」という制度です。
婿制度はどのような制度?
繰り返しになりますが、昭和22年以前は、法律で「夫が妻の元に嫁ぐということが許されていなかった」のです。
昭和22年法律第222号により改正される前の民法(旧規定)には、婿養子(ただし、法文上は「壻養子」)に関する規定が存在していた(旧規定788条2項)。旧規定では、婚姻した場合、原則として妻は夫の家に入ることになっており(旧規定788条1項)、伴い妻は従前の家を去ることになる。
婿養子 - Wikipediaより引用しました(太字はわたしによるもの)。
ところが、女性が1人っ子の場合、夫の家に「嫁いで」しまうと、その女性の家が滅びます。
そうなると、女性の1人っ子は家を守るために結婚できない。でも、結婚しないと子どももできないため、結局は家が途絶えるわけです。
さすがにそれはヤバい……ということで、作られた「強引な制度」が「婿養子」制度なのです。
「婿養子制度」というのは、夫が妻の家の「実の子ども」になる……というふうに強引にポジションを変更します。
そして、養子制度と同時に「婚姻も実行する」という結構ややこしい荒技です。
つまり、法律上では「夫が妻側の子どもになる」ことで、同居を可能にし……んん?
なんか、自分の息子と娘が結婚するようになるので「アレレ? きょうだいって結婚できないハズじゃ?」と思いますけど。
まぁ、そこはオッケーなようです(笑)。そんなレベルの強引な「つじつま合わせの荒技」ですからね……。
現在は「婿養子制度」は存在しない
さて、その「婿養子制度」なのですが、現在は廃止されています。
昭和22年法律第222号により改正された民法は家制度を廃止し、家督相続人の確保を主たる目的とする婿養子の制度も、特別の制度として存続させる必要性がなくなったため、法律上の制度としては廃止された。
婿養子 - Wikipediaより引用しました。
昭和22年の法律改正により、昔の法律上の制度としての「婿養子制度」は廃止になりました。
もちろん、無理やり実行しようと思えばできるそうですが、現在ではそこまでしてやる理由やメリットがないんです。
「婿養子制度」が廃止になってどうなったかというと、結婚すれば、妻・夫の両方が親元の戸籍から出て、「新しい家族」の戸籍が作られることになりました。
現在は、夫が妻の姓を名乗ることも許され、結婚した夫婦はどちらの姓を名乗ってもよくなりました。
とはいえ、21世紀の今でも、日本ではあまりにも妻側が夫の姓を名乗るため(96%)、この改正が知られていないんですね。
ちなみに、「嫁ぐ」という言葉は、「妻側が実家の戸籍から出て、夫側の家の戸籍のなかに入る」という意味で、ゆえに「入籍(夫側の戸籍に入る)」という言葉が使われていました。
つまり、現在は、「結婚した夫婦は新しい戸籍を作る」ので、「嫁ぐ」や「入籍」という言葉はおかしいのです。
「夫が改姓=婿養子」という発想は時代錯誤
さて、長くなっていますが、わたし、父、祖父の状況を表にまとめます。
祖父 | 以前存在していた「婿養子」制度で祖母と結婚 婿養子 |
---|---|
父 | 結婚し、妻側の家に同居 婿養子ではない |
わたし | 結婚し、妻側の姓に変更 婿養子ではない |
いやー、こうやって見るとうちの家族ってバリエーション豊かですねぇ。
つまり、現在使われる「婿養子」という言葉は、こういう理由で間違っているのです。
婿養子ではない例
- 結婚して妻側の家で同居する夫は婿養子じゃない(単に同居しているだけ)
- 結婚して妻側の姓に改姓している夫は婿養子じゃない(結婚する際に、単に妻側の姓を選んだだけ)
男性が姓を変えているのを目の当たりして「婿養子ですか?」という時代錯誤だということです。
男性が改姓するのが珍しすぎて異端に見えるからでしょう。
婿養子差別は残っている
事実上、「婿養子」という制度は廃止されていますが、差別する言葉としていまだに残っているようです。
「男性でありながら女性の姓を名乗っているかわいそうな人」……というネガティブなニュアンスでの差別です。
つまり、「本来女性がやることを男性がやる」ということになるので、女性差別がいまだに根強く残っている日本社会では差別されるのでしょうね。
「男なのに(男のほうが身分が上なのに)かっこ悪い」というニュアンスでしょうか。
そもそもなんですが、「夫が姓を変えるのがかわいそう」という発想について、それを言い出すと「姓を変えている96%の妻」っていったい……。
そういえば、子どものころ、祖母に「ヨスのお父さんは婿養子?」と言われても「違う」と答えるんやでと言われていたのを思い出しました。
婿養子差別、根強いんでしょうね……。
今回は「婿養子」っていうおかしな日本語についてまとめました。
とにかく現代では「婿養子」という言葉が適応される男性に出会うことはまずありえないということを知っておいてください。
それ以前に、夫が姓を変えるのが普通の世の中になってほしいですね。それ抜きには男女平等は絵に描いた餅です。
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