こんにちは! ヨス(プロフィールはこちら)です。
ネットを見ていておもしろいなーと思うものを発見。それは仕事から帰るときに「すみませんがお先に失礼します」の「すみません」を禁止!というアイデアです。
「すみません」を禁止しろ!
わたしがTwitterで見たのはこちらのツイート。
ひとりだけ先に帰るのは、後ろめたい…。そんな声から生まれたのは、「帰る時のすみません禁止」というアイデア。いま、たくさんのサポーター企業によって、実践されています。https://t.co/XB03gjXgLE
— Google Japan (@googlejapan) March 14, 2016
おおー、イイ感じですね。会社から帰るときに「すみません、お先に失礼します……」は禁止!という提案です。
元ネタを見るとこんなことを書いていました。
ちょっと早く帰る時「すいません。お先に失礼します。」なんて言っていませんか?謝る必要ありません。ママはもちろんそれ以外の人もしっかり仕事をして帰るのだから、堂々と「お先に失礼します!」と言って帰りましょう。
Happy Back To Work - Women Will - みんなのアイデアより引用しました。
これ、完全に同意です。まるで「残業しないこと」がめっちゃ悪いことに見えますよね。
そもそも、「サービス残業♪」と軽々しく呼んでいるのに、ほとんどの場合強制なんですよね。なんじゃこりゃ。
「すみません」って言葉がややこしい!
ちょっと日本語の「すみません」に焦点を当ててみますが、この日本語ってややこしいんです。
「すみません」は相手に迷惑をかけているときに使う言葉ですが、そう簡単なものでもないんですよ。たとえば……
(わたしが両手に荷物に持って手がふさがってエレベーターに乗っている)
乗客「何階ですか?」
ヨス「すみません。3階でお願いします」
この場合の意味は「ありがとう」です。英語だと間違いなく「Thank you」と言うところです。
もう一個の「すみません」が難問
もう一つが実はややこしいんですね。
(時計を見て6:00になったのを確認して)
ヨス 「すみません。お先に失礼します」
実はこれ、いっけん謝罪に見えますが、こちらに非がある謝罪じゃないんですね。英語だと「Sorry」ではなく、「Excuse me」に該当する言葉です。まぁ、英語ではこういうシチュエーションで使わないのですが(笑)。
ヨス「すみません。後ろ通りま~す」
これも同じですね。「なんてことをしてしまったんだ!」と自分の非を認め、謝っているわけではないんですよ。
よく日本人が「I'm sorry」と「Excuse me」を混同させるのは母語の日本語が原因です。
I'm sorry.は、こちらに非があることを認めて謝るときや、相手に対して失礼があった場合に使います。Excuse me.は、中座したり、人の前を横切ったり、軽く体が触れてしまったりしたときに、「ちょっと失礼」「あらっ、失礼」という感じで使います。よって、テレビを見ている人の前を通るときは、Excuse me.が適切です。前を通ったときに相手の見たかったシーンがちょうど隠れてしまった、などという場合は、I'm sorry.が適切です。
I'm sorry.とExcuse me.はどう違う? ほか|英会話|アルクより引用しました。
英語ではおおざっぱには……
- こちらに非がある → I'm sorry
- こちらに非がない → Excuse me
という原則があるんです。もちろん例外的な場合もあるんでしょうけど(言葉ってそういうものです)。
つまり英語話者にはこの2つの概念は別個のものと認識されているのに、日本語話者はこの2つを同じものととらえているということです。「shy」「ashame」「Embarrasse」の混同も同じです。
ああっ、言語のことを書き出すとどんどんマニアックな方向に行きたくなってしまう……(笑)。
「すみません」は錯覚を生み出す
こういういろんな意味を含むため、日本語の「すみません」は便利な反面、意図があいまいになってしまうというデメリットがあります。
日本語の「禁煙」って言葉が2つの意味を持っているのと同じですね。意味がめっちゃフワッとするんですよ。
「残業」の話に戻りますが、帰るときに「すみません!」というのは明らかに「こちらに非がない謝罪」なわけです。
でも「すみません」には「こちらに非がある謝罪」でも使うため、使っている本人さえ、脳の中の処理では混乱しているでしょうね。
まるで「悪いことをしている……」という錯覚です。別の言葉で使い分けていれば、この錯覚は間違いなく生じないです。
これを悪用したのが、交通事故で「すみません」とつい言ってしまったら不利になる……というやつです。けっこう陰湿ですよね。「非がある謝罪」にすり替えているんです。
錯覚した罪悪感を持つ弊害
こんな2つの意味がごっちゃになっている「すみません」にはこういう弊害があります。
なので、残業をせずに帰るときに「すみません」を使うとわたしたちは罪悪感を錯覚して持ってしまいます。
っていうか、残業をしてこっちが迷惑を受けていますからね。本来は使うのはおかしいです。だって残業代も出ないし。
あ、言っておきますが、本当に実力不足で残業になって会社に残業代を払ってもらって「本当にすみませんっ!!」っていう状況はわたしの場合はほぼ皆無なので除外して書いています。
あいまいなのが日本語らしさで、日本語の魅力ではあるのですが、こんなふうに生活の弊害になっている場合は「すみません」を使わないという方策はすごく意味あることですね。
さて、今回は元々「残業しないで帰るときに『すみません』は言うな!」と言いたかっただけなのですが、言語オタクのわたしが書くとこういう方面になっちゃいました。
たぶん、日本語が英語に出合えなければこの2つの違いが「すみません」に存在することって気づかないでしょうね。
ふと思ったけど、こういう錯覚を利用して自分を変えるというのもアリなんだなと。「自分はできるッ!」と思い続けるとほんとに脳が錯覚しそうですよね。うまく使えばこれは良さそう。