[英語の発音]知ってました? 「king」は「キング」とは読まないよ!

こんにちは! 音声学おたくのヨス(プロフィールはこちら)です。

今回は英語の発音についてです。「king」の発音は本当はどう読むの?というお話です。

「king」は「キング」って読まないよ!

日常でよく聞くカタカナ英語の発音で気になるものがあります。その1つが「king(キング = 王様)」の発音です。英語では「キング」って発音しないんですよね。

ほかにも例えば「ring(リング = 指輪)」「sing(シング = 歌う)」「young(ヤング = 若い)」みたいなやつも同じです。全部発音が違います。

「ランニング」「シンキング」のような「 ing 系」も同じです。

じゃあ「king」って何て読むの?

じゃあ何て読むんでしょうか? 音声で聞いてください。私(イネ花粉アレルギーで慢性鼻炎)が鼻音を発音してて微妙ですけど(笑)。

実は「king」は「キン」の方が英語の発音に近いんです(後でもっと詳しく説明します!)。カタカナでは、たぶんスペルの「ng」に引きつられて「ング」って書いているんだと思います。

そしてこの「ング」の表記が、間違いなく日本人の英語の発音の邪魔をしてるんですよね。

あ! 例外もありましたね。「Hong Kong」とか「Ping-Pong(卓球)」はなぜか「ホングコング」「ピングポング」とは呼ばず、「ホンコン」「ピンポン」って読みます。でも「King Kong」は「キンコン」と読むこの統一感のなさ(笑)。

「king」の「ng」は1つの音

言ってしまうと、そもそも英語の「ng」ってスペルがややこしくさせているんですよね。なんかね、「 n 」と「 g 」が合体してるみたいに見えますよね? そうなるとやっぱり「キング」って読んでしまいたくなるもの。

でもこの「ng」は「ン+グ」のように2つの音が合体した音声ではないんです。たった1つの音なんです。

「ng」の発音記号
「ng」の発音記号

多分、英語の辞書を見たことがある人は「 n 」と「 g 」が合体したような発音記号(上画像)を見たことがあると思いますが、これがこの「ng」の音なんです。何度も言うように1つの音です

「ng」の発音はどうやるの?

じゃあ結局、「ng」ってどうやって発音するのかですが、この発音は実は日本語でも頻繁に使われている音なんです。

それが「銀行」の「ん」です。「番号」の「ん」と同じ音です。「参加」の「ん」も同じです。

は??「ん」やろ? いちいち「銀行」の「ん」って言わずに「ん」だけでええやん!って言われそうですが、ダメなんですよ。

実は「ん」は、「ん」の後ろに続く音によって発音が変わりまくるんです。

日本語の「ん」にはいろんな音がある

例えば「本当(ほんとう)」の「ん」と、「乾杯(かんぱい)」の「ん」は発音が違うのをご存知ですか?

「ほとう」の「ん」の発音は、舌が前歯の後ろに付くのに対し、「かぱい」の「ん」は唇を閉じて発音してないですか?

実は「ほんとう」の「ん」が「 n 」の音なんです。で、「かんぱい」の「ん」は「 m 」の音なんです。

後ろの音に引きずられる

この「ん」の音が変化する理由といえば「ん」の後ろに来ている子音の音に引きずられるからなんです。

「 n 」と「 t 」、そして「 m 」と「 p 」が、それぞれ同じ舌の位置です
「 n 」と「 t 」、そして「 m 」と「 p 」が、それぞれ同じ舌の位置です

ほら、「ほんう」の「と」は歯の後ろに舌を付けて発音しますよね?「 n 」も同じなんです。歯の後ろに付いてますよね?

それに対して、「かんい」の「ぱ」は唇を一瞬閉じて発音しますよね。それに引きずられて、「ぱ」の前の「ん」も唇で発音するようになるんです。

実は言葉って1日に何万単語も発音するので無意識に省エネで発音したくなるんです。そのため、舌をなるべく動かさないように進化していくんですよ。よく言われる「ら抜き言葉」も、実は省エネという進化なんです。

日本語の「ん」は、「鼻から音を出す」という特性さえ合ってれば舌の位置はどこでも良いという暗黙のルールができたんですねー。知らずに「ん」を発音してたでしょ??

「銀行」の「ん」は?

さて本題に戻ります。「銀行(ぎこう)」の「ん」はどうでしょうか?

ここでも同じで「ぎんこう」の「こ」に繋がっているため、「こ」の子音「 k 」の舌の構えを「ん」のときにすでにやるんです。

「ぎこう」の「ん」を発音するときって、舌のどの部分で音を作ってますか? たぶん(……というか間違いなく)、舌の根元の辺りを使って発音しているはずです。下の図のように舌の根本辺りが上顎の後ろの方にくっついて、鼻から息をだして「ん」って言っているハズです。

「ng」は1つの音、そして1つの発音記号
「ng」は1つの音、そして1つの発音記号

そうです。この「ん」が「ng」の発音なんですよっ!「ぎんこう」の「ん」が、「king」の「ng」です。つまり「king」を日本語っぽい発音でいうと「キン」です。「グ」は要りません(笑)。

じゃあ「ng」って書くなよな!

これ、本当はアルファベット1文字で書けたらすんなりいってたんですよ。でも、当てはめるアルファベットが足りないため、「ng」って2文字で表現してるんですよね。

日本語の「しゃ」とかと同じです。これも本来、1つの音なのに文字では2つ使うため、まるで2つの音が使われているみたいに見えます。余談ですが、しりとりで「かいしゃ」で終わったら「しゃ」で始めるのが音声的に正しいです。「や」ではないですぞ!

「ng」の発音のコツ

最後に「king」の発音のコツを。って言っても、日本語話者ならすでに日常で使っている音声なので、そんなに難しくないです。

「キング」を言おうとして、「グ」を言わずに「ン」で止める!!

たったこれだけです。最初のうちは「なんか『グ』を言わないのは中途半端で気持ち悪いな……」と思うかもしれません。でもこれが正しい発音なので、慣れてください。ぶっちゃけ、慣れだけの問題だと思いますので(笑)。

この動画がけっこうわかりやすかったので、文字だけではピンとこんわーって方はこちらを。

今回は「king(キング)」の発音から「ng」の発音を説明しました。私もこれを知らずに始めの頃は「キング」って言っていたのが懐かしいです。

ちなみにこの「ング」って発音ですが、たぶん「ング」って言っても伝わると思います。ただ聞くときにはちゃんと聞き取れないとマズイです。

例えば「sing(歌う)」と「sin(罪)」のように「 g 」があるかないかで意味がぜんぜん違う単語があるからです。まぁ、文脈でわかると思いますけど。「 n 」の発音についてはこちらの記事で!

わたしの運営する英語メディアでは、もっと詳しくこの内容について書いています。こちらもご覧ください!

参考: 「king」の発音は「キング」じゃなかった?!「ng」を完璧に発音するコツを紹介! | 英語びより